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How to choose didjeridu - 彼らの感覚に寄りそう
ぼくたちがディジュリドゥを選ぶとき、音の質感・音量・演奏感・見た目・作者などさまざまな観点から「これはいい楽器だ」と判断して選んでいる。その「いい楽器」とは何なのか?その基準となるものや指標はなく、主観的で曖昧な感性で選んでいるのが普通なのかもしれない。

ではヨォルングはどうなのか?彼らの間では世代的な演奏傾向の違いや、楽器と触れ合うことで生まれる演奏者の成熟度の差はあるものの、どこか共通した価値観が存在し、それにプラスアルファ個々人の指向性があるように感じる。

とくに根拠があるわけではないが、儀式のあとに少しだけ使っていた楽器を鳴らさせてもらったり、個人所有の楽器を触らせてもらったりすると、なにかベースに共有するものがあるように感じられるのだ。また、Earth Tubeで集めてきた彼らが儀式で使った楽器、プライベートの楽器を鳴らしても、さまざまな傾向の中に包括的な指向性を感じる。

中には「コレかぁ〜」と頭を悩ませる難しいものがあったり、何も考えずともシンプルに「いいなぁ!」と感じるものもあってバリエーションはとっても豊か。パっと鳴らしてイイと感じる楽器がわかりやすいのだが、実は自分の演奏をドラスティックに変化させるきっかけになるのは頭に「???」が浮かぶ楽器であったり、なぜ彼らがその楽器を選んだのかスっと理解できない楽器だったりする。

もしかしたら、そういう楽器と触れ合ったときに自分が感じた違和感は、そのままヨォルングのディジュリドゥ奏者たちのリアルな演奏感との距離感と言ってもいいかもしれない。

その距離感を縮めていく行為は、彼らが共有していてぼくたちがいまだ感じえていないディジュリドゥの演奏感へと寄りそっていくことにつながるんじゃないだろうか。彼らが使った楽器を演奏していると、日本にいながらにして彼らの輪の中にある、そんな錯覚を覚えるのだ。
# by earth-tube | 2014-05-30 19:14 | 店長の日記
貫通していないクラックの修理2
しっかりとした厚みがあって、表面上は割れているがクラックは貫通しておらず、テープでクラックをカバーして空気もれをふせいでも演奏感に変化はない。こういう場合はクラックの修理以上にメンテナンスが必要になってくる。
エポキシボンドによる補修
まずはクラックを完全に閉じる作業から。エポキシボンドを塗布して表面をなめらかにするためにヤスリとサンドペーパーで研磨しました。
木工用ボンド
その後、分厚めに木工用ボンドを塗ります。写真ではわかりにくいですが、最初にまずかなり薄い木工用ボンドを塗って乾燥させてからサンドペーパーをかけて毛羽立ちをとって、濃いめの木工用ボンドを塗っています。これはDjalu'の娘のLinaから教わった手法で、世界中からいろんな人がイダキ・マスターの元を訪れるせいか、ここにはMandapulに必要な木工技術が自然と集約してくるようだ。

その後、かなり薄く木工用ボンドをといた水を内側に注ぎこんで、ボソボソだった木に湿度をあたえます。乾燥後に、荏胡麻油を入れて全体をオイリングしてしあげました。

オイルを入れる前の演奏感は硬く響くイメージで、トゥーツがやや出しにくいという印象だったが、オイリング後はグッと押し込むことができて、トゥーツのキレがかなりよくなった。よりおおらかに演奏することができるようになったという印象。MP3にしてしまうとなかなか違いがわかりにくいが、オイリングのビフォーアフターを聞き比べてみてください。カサカサとした印象がなくなって、丸みを感じながらも高音のノビが出て、トゥーツのキレがよくなっています。

楽器のメンテナンスって大切だなぁと思う変化でした。オイリングはご希望の方はお気軽にお申し付けください。サイズやオイルの吸い込みにもよりますが、一回1500円〜で楽器によってはかなり演奏感が変わるのとクラックの防止になります。
# by earth-tube | 2014-05-22 15:01 | ディジュリドゥの修理
貫通していないクラックの修理1
今回の修理はイダキ・マスターDjalu' Gurruwiwiの作品。製作行程をつぶさに見て、元の木の状態やどうやってシェイプされたか、どれくらいの厚みがあるのかを知っていたので割れてしまったのが少し意外だった。特別に硬質な木質ではないもののしっかりとつまった木質で元々クラックやホールの修理箇所もなく、均一に厚みをしっかり残してシェイプされていたからだ。
クラックの状況
演奏せずに2-3日放置するとクラックはもどるが演奏すると開いてくるとのこと。鳴らしてみるとクラックからの空気もれはないように感じるが、演奏感はややドライでタイトになっているという印象。
溝ほり
クラックにそって彫刻刀で溝を掘っていく。クラックの筋が見えなくなるまで削っても演奏感が変わらないことから貫通しているようではなさそうだ。
クラックのアップ
クラックの原因はエアコンの空気に触れ続けるなど乾燥した状況にあったか、瞬間的に強く吹き込んでいるかのように感じる。振動が原因ということも考えてマシーンサンディングはやめてヤスリで少しづつペイントをはがしていく。

削ってみると乾燥が進んでいるようだったので、マウスピースとボトムの内側に木工用ボンドを塗っておく。切ったばかりのユーカリの木はマウスピースとボトムから急激に乾燥するため、現地では持ち帰ってすぐに木工用ボンドを切り口に塗る。木は呼吸しているので、マウスとボトムにはしっかりとボンドが塗られていることは木質が安定するまではけっこう大事。

次にエポキシを塗ってリペイント。
# by earth-tube | 2014-05-09 11:11 | ディジュリドゥの修理
60cm以上のクラックの修理 2
深めの溝が大きく開いたクラックだった今回の修理はエポキシボンドに木屑を混ぜることなくエポキシ単体で行います。薄い部分に振動が集中して割れたというケースではないのでクラック周辺部を分厚くする必要はないが、再発を防ぐために厚みを増すように少し盛り気味にする。
エポキシボンドの塗布
表面的に乾いていてもすぐに研磨しだすとエポキシの硬度が足りずに、ボロボロとくずれてしまうので乾燥に2−3日かける。その後グラインダーで表面を滑らかにして、サンドペーパーをかけて表面を整える。
エポキシボンドの研磨後
木工用ボンドを塗り、乾燥後に素地調整のためかるくサンドペーパーをかけて、リペイントしました。
リペイント1
表面上はクラック部分がほとんどわからない状態になっています。ペイントには現地で使われているアクリル絵の具Jo Sonja'sを使うので、色の差もほとんど出ません。
リペイント2
この楽器のようにシンプルなペイントの場合のレタッチはそれほど難しくなく、はじめての人でも同じアクリル絵の具を使えば簡単にできるでしょう。細いライン部分だけは専用の筆が必要で、西アーネム・ランドでは草の茎が使われ、北東アーネム・ランドでは髪の毛を使って自作される。

アース・チューブでは購入後1年間は無料で修理していますが、ディジュリドゥをメンテナンスしていくためにも自分でやってみるのも修理のスキルアップにおすすめですよ。
# by earth-tube | 2014-05-08 16:15 | ディジュリドゥの修理
60cm以上のクラックの修理 1
今回の修理はDhapa GanambarrのMandapul。厚みがかなりあるので、強く吹き込んだことによって薄い部分が振動によって割れるという典型的なクラックのパターンではないようだ。

クラックは貫通しているものの外側からメキメキと引き裂くように割れている。強い直射日光に長く当たったとか、エアコンがかかった部屋で乾燥した外気に直接触れるなどの原因が考えられる。クラックの長さは60cmをこえていて、いままで修理した中でもかなり大掛かり。
クラックの状態
まずはクラックにそって彫刻刀でけずっていく。このときにはクラックの筋がなくなる深さまで削ることが重要で、もしクラックの溝が残ったままだとそこにエポキシが入っていきにくくなり、再度同じ所が割れる可能性が高まる。
彫刻刀でけずる
このクラックの場合、溝がかなり深くさらにクラックが上下にのびていく可能性があったので、アーネム・ランドで出会ったドイツ人に教えてもらった手法でクラック止めをしてからエポキシを塗ることにしました。小さいドリルでクラックの上下に穴を作ることでクラックを止めることができるという技術らしい(さすがマイスターの国ドイツ!)。
ドリル
エポキシボンドはクラックに対してクギを打つように頭の部分をかぶせるため、彫刻刀で削った周囲とクラックの溝をサンドペーパーで40番手→80番手→160番手と倍の細かさになるように表面をなめらかにして下地作りをします。↓下記画像ではクラックの溝がわからなくなるまで削りこまれている。
下地作り
このあとエポキシボンドをつける行程に入ります。
# by earth-tube | 2014-04-28 19:41 | ディジュリドゥの修理