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出会ったディジュリドゥ1
今日はダーウィンの中でもアボリジナルの職人の楽器を置いている唯一といっていいショップ「Aboriginal Fine Arts Gallery」を訪れた。その倉庫にはDjaluの古いイダキや、いつになったら店頭に並ぶのかわからないようなディジュリドゥが数多く並んでいる。並んでいるといっても部屋の壁一面に無造作に立てかけてあるだけである。そのほとんどが白人が作ったディジュリドゥの上に伝統的にディジュリドゥを演奏することがない砂漠の地域のアーティスト達のペイントが施されたものだった。これは観光客にとってはそこの地域のアボリジナルが実際にディジュリドゥを演奏するかどうかという事はあまり重要ではなく、派手で美しいペイントのディジュリドゥを好んで購入するという傾向からなのだろう.......

一通りDjalu Gurruwiwi氏作のイダキを試し吹きするもピンとこず、山のように並んだその砂漠エリアのペイントが施されたディジュリドゥ達に目をやると、ほんの少しだけ他の地域のペイントが施された楽器が重ねるように立てて並べられたディジュリドゥの隙間から見えるではないか!「これは?」と思って手に取ると明らかにオーカー(顔料)ペイントされたビンテージのディジュリドゥ、しかも西アーネム・ランドのものである!

その後、狂ったように何重にも立ち並ぶディジュリドゥの壁を1本づつどかしながら奥にひそんでいる短い目立たない楽器を次々と選び出す、いやこれはほとんど救済に近い!その中から3本だけチョイスして購入する。


'80年代頃と思われる西アーネム・ランドのディジュリドゥ1
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全体的に厚みがかなり薄く作られており、マウスピースには当時つけてあったと思われる黒いビーズワックスが硬化した状態でついている。薄い部分に2カ所クラックがはいっていて修理しないと全く音にならないが、ビーズワックスで埋めて演奏すると西アーネム・ランドのディジュリドゥらしいサウンドが鳴る。もちろん古い楽器だけにサウンドは現在の進化したディジュリドゥよりも控えめになっている。


'80年代頃と思われる西アーネム・ランドのディジュリドゥ2
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このディジュリドゥもすこし薄手で、マウスピース周辺が西アーネム・ランドに特有な先細りの形になっている。上下の黒い部分にオーカーでペイントされているアートは何かの植物のようで、ほそい枝の先には小さな葉っぱが描かれている。このディジュリドゥにはクラックがなく吹きやすく、サウンドもこの地域に特有な倍音のバランスになっている。


2000~2002年頃のKimberleys地方のディジュリドゥ
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Kimberleys地方のディジュリドゥは珍しい。短く、吹き口が大きく、デビッド・ブラナシのディジュリドゥのように一定の薄さに削ってある。中の空洞は完全にノータッチでシロアリが食べた非常に美しい滑らかな空洞をそのまま利用している。サウンドはWANGGAスタイルを演奏するのには最適な高めの倍音の粒がそろっている。描かれているペイントはWandjinaと呼ばれるKimberleys地方独特の宇宙人のような見た目の精霊がエッチングで描かれており、裏面には蛇とナマズの中間のような生物が描かれている。

出会ったディジュリドゥ1_b0021108_18244995.jpg「Wandjinaとは西オーストラリア州北部のキンバリー地方のNgarinyin、Wororra、Wanambulの3つのクランにとって全ての創造主である最高位の精霊(ABORIGINAL MUSIC FROM AUSTRALIA - Unesco Collection Musical Sources / LP or CD / 1959-69 / Unesco & Philipsより抜粋)」

このようにキンバリー地方で最も高位にある精霊で、ロックアートとして頻繁に描かれているようだが、実際にディジュリドゥに描かれているものは初めて見た。


この3本のディジュリドゥを購入した後に店を出、ハッと気がついて自分の手のひらを見るとホコリとビーズワックスにまみれていたが、ショーウィンドウに映った僕の顔はニンマリと充足感にあふれた顔だった.......
by earth-tube | 2004-09-22 18:29 | Darwin
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