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イダキ・メイキング
イダキ・メイキング_b0021108_23184778.jpgブッシュに行った日はシェイプをせず、あくる日の昼頃、ラリーは一番気に入っていた木をシェイプしだした。生木の状態でほとんど加工をしなくてもいいような状態だったが、内部の空洞をノミで削るのに結構時間を使っていた。そして作り出した頃「Dhangu Manymak Baywarra(これはいいBaywarraになる)」と何度もDjaluに話かけたりして、やけにテンションが高かった。こういう時のラリーはかなり期待できる。

そして、実際できあがってみると音に深みがあり、音域が広く、ダイナミックなサウンドが鳴るのにバックプレッシャーは高く吹きやすい。長身でマウスピースのサイズもほどよく、Galpuクランだけにあるライトニング・パワーのイダキ「Baywarra」らしさをしっかり持っている。結局ラリーが作ったのはこの1本だけだった。ペイント以外、サンドペーパーがけまで全ての行程をラリー一人でやっていた。

Djaluは体がきついようで、Mirarraが手伝いに来て、ラリーがカットしたもう1本を削り出した。みるみる間に1本作り、Mirarra自身のコメントによると「Dhuwala yirritja yidaki. Ngarraku one. Burarrwanga ya.(これはイリチャのイダキ。俺の方のイダキだ。Burarrwanga Gumatjクランの楽器だよ。)」そのコメントとおりで、前述のラリーの作ったイダキとは全く違ったテイストで、F#/Gという高いピッチで、ドライでダーティーな音色が特徴的。中の空洞は狭く、この音色のイダキ特有の形状をしている。のど元を使ったプレイを明確に反映してくれる。

イダキ・メイキング_b0021108_23204365.jpgスピーディーに1本作り終えると、Mirarraは次のイダキを作りはじめた。今度のはラリーが作ったのとかなり似た感じのイダキで、ディープで音域が広く、舌をダイナミックに動かすことによってより激しいサウンドになる。このイダキもラリーの楽器同様かなり吹きやすい。できあがったこのイダキを後でラリーが吹いて、「これ、俺がカットしたやつだな。Manymakだろ?」と言っていた。


イダキ・メイキング_b0021108_23231326.jpgDjaluは今回1本だけカットし、ブッシュの中で一人ノミをふるって作ったイダキがあり、途中まで意欲的に作っていたのだが外側を削っていて穴があき、エポキシボンドがその場になかったため作るのを一旦やめた。修理が済むとリッチでディープなDjaluらしいサウンドになり、特にマウスピースの作り方などは彼独特の形状ですばらしい。ペイントは娘のセルマがGalpuの最も重要なトーテムの一つ「Dhatang(Water Lily)」をきれいに描いてくれた。ベースは最近では珍しいオーカーだ。

今回はラリーが自分でカットしてペイント以外の全てを一人で作ったイダキが1本。そしてカットはラリーでシェイプはMirarraのイダキが2本、と合計3本を一緒に作ることができた。といっても僕は全くノータッチで、手伝ったのはノミを使う時にイダキを押さえる程度。

他にも奥さんが自分で作った楽器や、娘さんの楽器、そして奥さんがカットしたイダキもあった。このような楽器もひっくるめてDjalu Gurruwiwi作として売られているのが現状だ。そしてラリーの楽器もその中にまぎれているのだと思う。そういう点では、ペイント以外の全行程をラリー1人でやったイダキは貴重だろう。そして健康状態が良くないにもかかわらず、すばらしい1本を作ってくれたDjaluに感謝!

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by earth-tube | 2006-05-27 23:29 | Yirrkala周辺
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